
よく出来た本だ。様々な資料からの引用を用いて、説得力のある論が展開できている。この本は、買わずにおいて最近見ると、大佛次郎論壇賞という賞までとって、密かに話題の書として浮上していた。だから買った。今では再び書店のTOP10に入ってきている。
丁寧な本である。自立生活サポートセンター「もやい」等反貧困活動に携わる、著者の情熱がよく伝わってくる。しかしいささか丁寧過ぎて、反貧困の「教科書」となってしまっている点も見過せない。正直非常に読みにくい(苦笑)。これではよほどこの問題に強い関心を寄せる人でないと読み通せないだろう。一般の人に問題を知ってもらうという、新書の「入門」的意味は、なくなってしまっている。
さて。内容は目次を見れば一目瞭然だが、第一部は貧困問題、第二部は反貧困、と、それぞれ現場からの視点で論が展開される。
この本を読んで俺が強く感じたのは、このように、社会的問題意識を持つ「現場」はたくさんある、ということだった。NPO・NGOはその代表的なものであるが、それらの活動が、実際に社会を変えたという話は聞いたことがない。俺もとあるNPOに在籍していたことがあるが、表面的には大きな目標を掲げてはいるものの、結局、組織の内部的なやりくりに追われて、拡がるどころか縮小してしまった。
こういった活動は、確かに良い(と思う)ことを行っているのだから、それはそれで良いことだと思うが、一方で、自己満足していても仕方がない。多分何かが足りないんだろうね、そうなってしまう背景には。俺は今、三国志なんか読んでいるもんだから、余計に考え入ってしまう。
結果としてこの本は、完成度は高いが、非常に取っつきにくい本となっている。ただ、反貧困とか、こうした問題について知るのには、文字通り「教科書」であるので、そういった人は、是非読むべき本だと思う。