‘津村記久子’ タグのついている投稿

[書評]第140回芥川賞受賞作、津村記久子、ポトスライムの舟

2009 年 2 月 18 日 水曜日

ポトスライムの舟

 津村記久子という名前には聞き覚えがあった。芥川賞受賞と聞いて、あ、ベテランさんの受賞なんだ、と思った。しかし、この津村記久子さん、若かった(笑)。

 蟹工船よりこっちでしょう。いつも手厳しい山田詠美からの「選評」は、ここ最近で最高のものではなかったか。事実、石原慎太郎にしても、受賞に値するものはこれしかなかった風な書き方をしているし、割と評価の分かれる芥川賞に於いて、今回は無難な受賞だった様だ。

 読んでみての感想。俺はこの作品を「文学」だと認めたくないな、と思った。著者の力量は認めるし、作品としての完成度も高いと思う。だが、内容が気に喰わない。

 池澤夏樹が、この作品の内容について、これが肯定されるのは社会の問題なのだから、と書いているが、小説になればどんなことを書いても良いのか。この作品のテーマは明らかに現代社会の一部を切り取ったものだが、この著者は一体どんな思いでこの小説を書いたのか、同じく小説を書いたことのある者として、その人格を疑ってしまう。

 物語は、年収163万円で忙しく働く、「ワーキングプア」のナガセ(女性・29歳独身)の心の動きを追ったものだ。単行本で100ページの短さと、「読み易さ」で、意外に面白く読める。最近の芥川賞受賞作で、「面白く」読めるものがあっただろうか。

 この作品の唯一の弱点は、「読後感の悪さ」だろう。俺が批判するのはこの点によく現れているのだが、まあそんな意味で、俺はこの本をお勧めしない。売れているが読まなくても良い本だと思った。