
悩む力。目次は一見煩雑で、もう一つ語り掛けて来るものが無い。それでも俺が買ったのは、著者が姜尚中だからであろうか。それに、俺が買った頃にはもう、話題になりかけていた。
五月の発行ながら半年を経た今でも書店の週間ランキングに入り込んでくるのは、これまたやはり著者が姜尚中だからであろうと思う。実際内容は、騒がれている程でもない、この人らしいと言えば「らしい」が。
時代の進歩(発展)によってむき出しになった「個人」、この本のテーマを一言で言うならこういう事になろうか。それを現代とよく似た状況にあった百年前、その時代を生きた漱石とウェーバーの著作を取り上げながら著者自身の思いを語る。「取り上げる」と書いたが、逆から言えば漱石とウェーバーの丁寧な著作案内にもなっている。
テーマごとに章を立て、働く、愛、金、と別々に論じられてはいるが、実際この本での彼の主張、すなわち「個人」の問題は、第一章、「私」とは何者かに詳しく、後の章はどこか内容の重みに欠ける。俺は全ての本を最後まで読む主義ではないので、本来ならば半分程の所までで投げ出していたところだが、書評を書くためだけに最後まで読んだ。そのくらい、後半は正直味気ない。
文章のことを言わせてもらえば、姜尚中はやはり「学者」なだけあって、その文章も「学者」の文章である。具体的には、一般人はまず使わないような言い回しやそれに伴う難解な漢字、読み辛いことこの上ない。物書きの文章ではないので仕方がないが。
何やら文句ばかりになったが、もちろん売れているだけの内容はある。何も著者のように難解に考えることはないが、この本のテーマである「個人」の問題、とりわけ青春時代の「悩み」の必要性を書いた下りは、他書に書かれた例を見ないので、特に若い人必読のものとなっている。是非、読んで欲しい箇所である。
最後に、この本がこれだけのロングセラーとなっている理由の本当のところは俺には解らないが、是非読んで欲しいと書いた箇所には、はっきり言ってそれくらいの価値はあると思うので、その内容が正当に評価されてのロングセラーだと俺は信じたい。そういう意味でも、読んで損のない本だと思う。




